先日6月29日に発表された、2018年度のものづくり補助金(平成29年度補正予算「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」)の一次公募の採択結果について、公表されたPDF資料を基に、ExcelとAccessを駆使してちょっとした分析をしてみました。

※2018年度の二次公募の採択結果に関する分析は、こちら「【補助金】2018年度のものづくり補助金の二次公募の採択結果を分析してみました」

 

前提

分析にあたっては、次のような前提の下、実施しています。

1.使用したデータ

分析に使用したデータは、全国中小企業団体中央会のサイトで公開されているPDF資料を基にExcel化して、データとして扱える状態にして使用しました。

※データの状態によっては、結構骨が折れる作業になるのですが、データ分析においてはこの『データとして扱える状態にすること』
 がとても重要です。
 「データクレンジング」といわれる作業で、主なものに全半角や文字のゆらぎの統一、項目数やコードの統一などがあります。
 要は分析前の「データ補正」ですね。これ、「分析の目的を明確化すること」とともに、とっても重要です。
 今回は、「受付番号」をどう扱うべきか?でちょっとした準備が必要でした。

2.「応募件数」の求め方

「採択数」自体は、単純にレコード件数をカウントすれば事足りますが、「採択率」を求めるためには分母となる「応募件数」が必要となります。
しかし、明確に公表されている情報は「採択されたレコードのみ」であるため、「応募件数」は「受付番号」のコード体系を基に推定値を求めて使用しています。
具体的には、受付番号の下4桁部分の最大値を都道府県ごとに取得して、その値を応募件数としました。

一般的に「受付番号」は、スタートトゥエンドでデータ管理するために入口で付与する通し番号ですので、「意味のある数値の羅列である」という仮定に基づいています。

この方法で算出した全体の応募総数の集計結果は17,099件でしたが、実際に公表されている応募総数が17,112件(17,275者)ということなので、誤差13件と概算値としては概ね問題なしであろうと判断しています。
ちなみに採択された全9,442件(※)の「受付番号」全体を眺めながら抽出した特徴を基に推定したコード体系は、こんな感じなのではないかなと。

 

※公表されている情報では採択数「9,443件」となっていますが、実際のレコード件数は1件少ない『9,442件』でした。
 確かに最終レコードの連番は、公表されている採択数「9443」と同じ数値となっていますが、データをよく見てみると、
 実は「6939番」が抜けてしまってて連番=件数とはなっていないんですね。大勢に影響はないのかもしれませんが。。

 

都道府県別の採択率の上位10/下位10

まずは都道府県別の採択率の分析結果からみてみましょう。

結果を見てみると、特徴としてみられることは「採択率の格差」ですね。
採択率トップの高知県ほか5県が70%を超えている一方で、最下位の東京都(!)は40%程度の採択率となっており、実に上下30%もの開きがあります。
ただ、全体の採択率が約55%であることを考えると、全体の中での採択率としてみれば、うまくベル型カーブに収まっている(=ずば抜けて高い/低い等、大きな外れ値はない)のかなというところです。

また、採択率上位に大都市圏(東京都、大阪府、愛知県)が入っていないこと、東京都の採択率が40.1%であること、例年の全体の採択率が40%前後できていたこと等を踏まえると、この辺りは何かしらの「神の手」が??

 

 

都道府県別の採択数の上位10/下位10

続いて、都道府県別の採択数の分析結果を見てみます。

採択数の上位は、応募数に比して大都市圏(大阪府、愛知県、東京都)がトップ3を飾っています。
愛知県(我が故郷!)、静岡県、神奈川県、長野県あたりは採択数もさることながら、採択率も全国平均55%を超えていることから、より優れた事業計画が多かったのでしょうか。

一方で採択数が少なかった都道府県では鳥取県の22件で、採択数トップの大阪府の約40分の1(!)、全体シェアにして0.2%となっています。

採択数については、事業所数(≒労働人口、人口規模)の多寡がほぼそのまま表れたといったところでしょうか。

 

 

激戦区は?

最後に都道府県別の応募数の分析結果です。

ほぼほぼ採択数を踏襲する形になっていますね。
全体の採択率(約55%)どころか、50%を割り込みながら、応募数上位を占める大阪府や東京都、埼玉県や福岡県あたりは、結構な激戦区であったのではないでしょうか?

 

 

まとめ

2018年度のものづくり補助金の一次公募結果の公開情報を基に、どこまで分析できるのか?

今回の分析のきっかけは、

  • 申請区分(ものづくり技術 Or 革新的サービス、一般型 Or 小規模型 Or 企業間データ活用型)によって、どれくらい採否の違いがあるのか?
  • 都道府県ごとに有利不利はあるのか?

といった、素朴な疑問が発端でした。

残念ながら、公開情報には申請区分がわかるデータは含まれていない(?)ようで、当初の疑問のすべては晴れませんでしたが、
わかる範囲での分析結果からは、採択率自体は全体で55%、上下70%~40%の間で収まっていることから、全体としてうまくまとまってるなあということでした。
次の機会には、都道府県別事業所数との対比や時系列比較などもしてみようと思います。

とはいえ、採択された各企業のみなさまにとっては、採択後の事業展開が本当の勝負ですね。

ご参考までに、全国版はこちら。